○千代田区総合設計許可要綱
平成27年9月25日27千環建指発第91号
千代田区総合設計許可要綱
第1章 総則
第1 総則
1 趣旨
建築基準法(昭和25年法律第201号)第59条の2に基づく総合設計制度は、適切な規模の敷地における土地の有効利用を推進し、併せて敷地内に日常一般に開放された空地(以下「公開空地」という。)を確保させるとともに、良好な市街地住宅の供給の促進等良好な建築物の誘導を図り、もって市街地環境の整備改善に資することを目的として創設されたものである。
一方で、マンションの建替え等の円滑化に関する法律(平成14年法律第78号。以下「マンション建替法」という。)第105条第1項に基づく総合設計制度は、同法第102条第1項の認定を受けたマンション(以下「要除却認定マンション」という。)の除却・建替えを促進するとともに、新たに建築されるマンションにおける公開空地の確保や、地域の防災、環境等への貢献等を通じて、市街地の安全性の向上や良好な市街地住宅の供給の促進等良好な建築物の誘導を図り、もって市街地環境の整備改善に資することを目的として創設されたものである。
これらの建築基準法第59条の2及びマンション建替法第105条第1項に基づく総合設計制度の運用に関しては、国から「マンションの建替え等の円滑化に関する法律第105条の規定の運用について」(平成26年12月5日付国住街第145号)の技術的助言が出されている。
千代田区においては、技術的助言の趣旨を踏まえるとともに、市街地環境の整備改善等に資する建築計画に対し本制度の積極的な活用を図るため、総合設計許可の取扱方針として本要綱を定めるものである。
2 基本目標
都市計画等に基づく地域のまちづくりの方針に沿った良好な市街地環境の形成を目指し、建築活動を通じて市街地環境の向上に資するよう建築計画を誘導するため、総合設計制度の運用に当たっての基本目標を次のとおり定める。
ア 市街地環境の整備改善
イ 良好な建築・住宅ストックの形成
ウ 公共施設の機能の補完
エ 市街地の防災機能の強化
オ 福祉のまちづくりの推進
カ 都心居住の推進
キ 職と住とのバランスのとれた都市の形成
ク 良好な都市景観の創造
ケ 緑化の推進
コ 低炭素型都市づくりの推進
3 運用方針
本要綱は、特定行政庁の許可の取扱方針を定めたものであるとともに、その許可に係る良好な建築計画の要件となる基準を広く一般に示したものである。
この基準は、技術基準として、許可の申請に当たっての必要条件としての性格を持つものであり、申請に係る計画が許可の要件を十分に満たすものであるか否かは、具体的な計画に即し、総合設計制度の趣旨等を勘案して判断する必要がある。
したがって、本制度の運用に当たっては、常に趣旨及び基本目標に照らして総合的見地から行うものとする。
なお、許可により緩和する制限は容積率制限のみとし、引き続き業務需要の高い土地利用特性がある千代田区において、第3次基本構想における施策1「住と職の調和のとれたまち」及び施策2「多様なくらしに応じた住まいを選択できるまち」を着実に実現していくため、許可の対象は、住まい・住環境づくりに係わる建築計画とする。斜線制限に関しては建築基準法第56条第7項の規定が適用できるため、本制度の許可による緩和は行わない。
第2 用語の定義
本要綱において、次に掲げる用語の意義は、それぞれ次に定めるところによる。
(1) 計画建築物
建築基準法第59条の2又はマンション建替法第105条第1項に基づく総合設計の計画に係る建築物をいう。
(2) 要除却認定マンション
マンション建替法第102条第1項の認定を受けたマンションをいう。
(3) 市街地住宅型総合設計
市街地住宅の供給の促進に資することを目的として、住宅の用途に供する部分の床面積の合計(容積率の算定基礎となる延べ面積に算入されない部分を除く。)が敷地面積に割増容積率を乗じて得た数値以上となり、割増容積率に相当する部分の住宅の専有面積が55平方メートル以上となる建築計画に適用する建築基準法第59条の2に基づく総合設計をいう。
(4) 共同住宅建替誘導型総合設計
良質な住宅ストックの形成に資することを目的として、原則として、建築後30年を経過した主たる用途が共同住宅である建築物を建て替える計画(
千代田区総合設計許可要綱実施細目(以下「実施細目」という。)で定める施設以外の場合は、住宅用途以外の用途に供する部分の床面積の合計が、建替え前より増加しないものに限る。)であり、割増容積率に相当する部分(建築基準法第3条第2項の規定により建築基準法第52条第1項、第2項及び第7項の規定の適用を受けない既存建築物における超過容積率に相当する部分を除く(超過容積率の算定方法は第4章第2の1(2)の規定による。)。)の住宅の専有面積が55平方メートル以上となる建築計画に適用する建築基準法第59条の2に基づく総合設計をいう。
(5) 都心居住型総合設計
都心居住を推進することを目的として、次のいずれにも該当する建築計画に適用する建築基準法第59条の2に基づく総合設計をいう。
ア 住宅の用途に供する部分の床面積の合計が計画建築物の延べ面積の3分の2以上となり、かつ、延べ面積の4分の3以上を住宅又は日常生活を支える施設(
実施細目で定める施設をいう。以下同じ。)の用途に供する計画
イ 住宅戸数の3分の2以上が55平方メートル以上の専有面積を有する計画
ウ 住宅の専有面積が全て40平方メートル以上となる計画
(6) 要除却認定マンション建替型総合設計
要除却認定マンションに係るマンションの建替えにより新たに建築されるマンションの計画(第2章第2の4(5)から(7)に適合するものに限る。)に適用する建築基準法第59条の2に基づく総合設計をいう。
(7) マンション建替法第105条型総合設計
要除却認定マンションに係るマンションの建替えにより新たに建築されるマンションの計画(第2章第2の5(5)から(7)に適合するものに限る。)に適用するマンション建替法第105条第1項に基づく総合設計をいう。
なお、敷地面積が500平方メートル以上の計画については、要除却認定マンション建替型総合設計として、建築基準法第59条の2に基づく許可を行う。
(8) 基準建蔽率
建築基準法第53条の規定により許容される建築物の建築面積の敷地面積に対する割合の限度を百分率(%)で表したものをいう。
(9) 空地
建築物又はこれに準ずる工作物に覆われていない敷地の部分をいう。
(10) 空地率
次式による数値をいう。 (空地面積/敷地面積)×100(%)
(11) 基準容積率
建築基準法第52条の規定により許容される建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合の限度を百分率(%)で表したものをいう。
(12) 割増容積率
本要綱によって基準容積率に割増しされる容積率(%)をいう。
(13) ピロティ等
ピロティ、アーケード等の建築物又は建築物の部分をいう。
(14) 公開空地
計画建築物の敷地内の空地又は開放空間(ピロティ等をいう。)のうち、日常一般に公開される部分(当該部分に設ける環境の向上に寄与する植栽、花壇、池泉等及び空地の利便の向上に寄与する公衆便所等の小規模の施設に係る土地並びに屋内に設けられるもの等で特定行政庁が深夜等に閉鎖することを認めるものを含み、車路並びに自動車及び自転車の駐車の用に供する部分を除く。)で、第3章第2の1(1)に定める公開空地の規模・形状の基準に適合する帯状又は一団の形態を成すものをいう。
(15) 歩道状空地
公開空地のうち、前面道路に沿って設ける歩行者用の空地及び当該空地に沿って設ける修景施設(当該空地に接する部分から幅4メートル未満の部分に限る。)をいう。
(16) 貫通通路
公開空地のうち、敷地内の屋外空間及び計画建築物内を動線上自然に通り抜け、かつ、道路(原則として道路法(昭和27年法律第180号)による道路に限る。)、公園その他これらに類する公共施設(以下「道路等の公共施設」という。)相互間を有効に連絡する歩行者用通路(当該通路に沿って設ける修景施設のうち、その接する部分から幅員2メートル未満の部分を含む。)をいう。
(17) 屋外貫通通路
貫通通路のうち、計画建築物の屋外に設けるもの(ピロティ等の部分を含む。)をいう。
(18) 屋内貫通通路
屋外貫通通路以外の貫通通路をいう。
(19) 広場状空地
歩道状空地、貫通通路以外の公開空地をいう。
(20) 公開空地の有効面積
公開空地の面積(有効面積の算定の対象となる部分に限る。)に、当該公開空地の種別に応じて第3章第2の1(3)に定める公開空地の有効係数を乗じた数値をいう。
(21) 有効公開空地率
次式による数値をいう。
(公開空地の有効面積の合計/敷地面積)×100(%)
(22) 基準公開空地率
有効公開空地率から次章第2の種類別要件に定める有効公開空地率の最低限度を減じた数値をいう。
(23) 地上部の緑化
敷地内の地上部を樹木で有効に植栽することをいう。
(24) 建築物上の緑化
建築物の屋上、壁面等の部分を樹木、多年草等で有効に植栽することをいう。
(25) 子育て支援施設
保育所、認定こども園、放課後児童健全育成事業の用に供する施設、一時預かり事業の用に供する施設、その他これらに類する施設。
(26) マンション
マンション建替法第2条第1項第1号に規定するマンションをいう。
(27) マンションの建替え
マンション建替法第2条第1項第2号に規定するマンションの建替えをいう。
第2章 計画要件
第1 計画の基本要件
1 共通事項
(1) 総合設計の適用区域
総合設計の適用区域は、指定容積率が1,000パーセントを超える区域を除く千代田区全域とする。
(2) 歩道状空地の設置
計画建築物の敷地には、原則として、歩道状空地を設けること。
なお、歩道状空地は、原則として、前面道路(幅員4.5メートル以上の歩道が確保されているものを除く。)に接する全ての敷地の部分に設けること。
(3) 外壁面の後退
ア 隣地境界線
計画建築物の外壁又はこれに代わる柱の外面から敷地境界線までの水平距離は、2メートル以上であること。ただし、要除却認定マンション建替型総合設計又はマンション建替法第105条型総合設計の適用を受ける計画建築物で敷地面積が1,000㎡以下のものについては、次式による距離とすることができる。
水平距離(m)=((A-300)/700)+1
A:敷地面積(㎡)
また、公共用歩廊、渡り廊下、地下鉄駅出入口施設その他これらに類する建築物の部分はこれによらないことができる。
イ 道路境界線
計画建築物の外壁又はこれに代わる柱の外面から道路境界線までの水平距離は、当該部分の計画建築物の高さ(敷地境界線の地表面からの高さをいう。)の平方根の2分の1に総合設計の種類別に必要な歩道状空地の幅員を加えた数値以上であること。ただし、
実施細目で定める危険防止の措置を講じている場合は、総合設計の種類別に必要な歩道状空地の幅員の数値以上とすることができる。
また、公共用歩廊、渡り廊下、地下鉄駅出入口施設その他これらに類する建築物の部分にあっては、これによらないことができる。
(4) 用途の制限
計画建築物は、東京都文教地区建築条例別表1に掲げる用途に供してはならない。
第2 種類別要件
1 市街地住宅型総合設計
(1) 敷地面積の最低限度
500平方メートルとする。
(2) 空地率の最低限度
空地率の最低限度は次式による。
空地率(%)=120-基準建蔽率
(3) 有効公開空地率の最低限度
計画建築物の敷地内における有効公開空地率の最低限度は、当該敷地の基準容積率に応じて、下表に掲げる数値とする。
| |
(単位:%) | |
基準容積率(Vo) | 有効公開空地率の最低限度(Po) |
100<Vo<500 | 35-(Vo/20) |
500≦Vo | 10 |
(4) 前面道路の幅員
計画建築物の敷地は、用途地域の種別に応じて、下表に掲げる数値以上の幅員を有する道路に接すること。ただし、商業地域内にある計画建築物の敷地が、幅員6メートル以上の道路に当該敷地境界線の長さの合計の4分の1以上接する場合で、かつ、幅員4メートル以上の歩道状空地(当該道路境界線から2メートルまでの部分は、建築物又は建築物の部分で覆われていないものとする。この場合、当該部分は公開空地の有効面積の算定から除くものとする。)を当該道路に接して有効に設けたときは、この限りでない。
| |
(単位:m) | |
用途地域 | 道路幅員 |
第一種住居地域及び第二種住居地域 | 6 |
商業地域 | 8 |
(5) 接道長
計画建築物の敷地の接道長は、(4)に定める前面道路の幅員の数値以上の幅員を有する道路に当該敷地境界線の長さの合計の6分の1以上接するものであること。ただし、(4)のただし書に該当する場合は、この限りでない。
2 共同住宅建替誘導型総合設計
(1) 敷地面積の最低限度
500平方メートルとする。
(2) 空地率の最低限度
空地率の最低限度は次式による。
空地率(%)=120-基準建蔽率
(3) 有効公開空地率の最低限度
計画建築物の敷地内における有効公開空地率の最低限度は、当該敷地の基準容積率に応じて、下表に掲げる数値とする。
| |
(単位:%) | |
基準容積率(Vo) | 有効公開空地率の最低限度(Po) |
100<Vo<500 | 35-(Vo/20) |
500≦Vo | 10 |
(4) 前面道路の幅員と接道長
計画建築物の敷地は、幅員6メートル以上の道路に当該敷地境界線の長さの合計の6分の1以上接するものであること。
(5) 隣地の取り込みの制限
原則として、隣地を取り込んだ建替え計画ではないこと。
3 都心居住型総合設計
(1) 敷地面積の最低限度
1,000平方メートルとする。
(2) 空地率の最低限度
空地率の最低限度は次式による。
空地率(%)=120-基準建蔽率
(3) 有効公開空地率の最低限度
計画建築物の敷地内における有効公開空地率の最低限度は、当該敷地の基準容積率に応じて、下表に掲げる数値とする。
| |
(単位:%) | |
基準容積率(Vo) | 有効公開空地率の最低限度(Po) |
100<Vo<500 | 35-(Vo/20) |
500≦Vo | 10 |
(4) 前面道路の幅員
計画建築物の敷地は、割増し後の容積率に応じて、下表に掲げる数値以上の幅員を有する道路(当該道路に沿って歩道状空地が設けられているものに限る。)に接すること。
| |
(単位:m) | |
割増し後の容積率 | 道路幅員 |
600%以下のもの | 8 |
600%を超えるもの | 12 |
(5) 接道長
計画建築物の敷地の接道長は、(4)に定める前面道路の幅員の数値以上の幅員を有する道路に当該敷地境界線の長さの合計の6分の1以上接するものであること。
4 要除却認定マンション建替型総合設計
(1) 敷地面積の最低限度
500平方メートルとする。
(2) 空地率の最低限度
空地率の最低限度は次式による。
空地率(%)=120-基準建蔽率
(3) 有効公開空地率の最低限度
計画建築物の敷地内における有効公開空地率の最低限度は、5パーセントとする。
(4) 前面道路の幅員と接道長
計画建築物の敷地は、原則として、幅員6メートル以上の道路に当該敷地境界線の長さの合計の8分の1以上接するものであること。
(5) 住宅用途以外の用途に供する部分
次のア及びイに適合させること。
ア 住宅用途以外の用途(実施細目で定める施設を除く。以下ア及びイにおいて同じ。)に供する部分の床面積の合計が、要除却認定マンションの住宅用途以外の用途に供する部分の床面積の合計より増加しないこと。ただし、住宅の用途に供する部分の床面積の合計が増加する場合はこの限りでない。
イ 住宅用途以外の用途に供する部分の床面積の合計が、基準容積率の算定の基礎となる延べ面積を超えないこと。
(6) 住戸の専有面積等
割増容積率に相当する部分(建築基準法第3条第2項の規定により同法第52条第1項、第2項及び第7項の規定の適用を受けない既存建築物における超過容積率に相当する部分を除く(超過容積率の算定方法は第4章第2の1(2)の規定による。)。)の住宅の専有面積を55平方メートル以上とすること。
(7) 隣地の取り込み等の制限
要除却認定マンションの敷地面積以上の面積の隣地を取り込んだ建替え計画、要除却認定マンションの敷地を細分化した建替え計画及びマンション建替法第2条第1項第1号に規定するマンションに該当しない建築物をマンションに変更した上で行う建替え計画ではないこと。ただし、特定行政庁が要除却認定マンションの除却・建替えのために必要と認める範囲で行うものについてはこの限りでない。
5 マンション建替法第105条型総合設計
(1) 敷地面積の最低限度
計画建築物の敷地面積の最低限度は、用途地域の種別に応じて、下表に掲げる数値とする。
| |
(単位:㎡) | |
用途地域 | 敷地面積 |
第一種住居地域及び第二種住居地域 | 500 |
商業地域 | 300 |
(2) 空地率の最低限度
空地率の最低限度は次式による。
空地率(%)=110-基準建蔽率
(3) 有効公開空地率の最低限度
計画建築物の敷地内における有効公開空地率の最低限度は、5パーセントとする。
(4) 前面道路の幅員と接道長
計画建築物の敷地は、原則として、幅員6メートル以上の道路に当該敷地境界線の長さの合計の8分の1以上接するものであること。
(5) 住宅用途以外の用途に供する部分
次のア及びイに適合させること。
ア 住宅用途以外の用途(実施細目で定める施設を除く。以下ア及びイにおいて同じ。)に供する部分の床面積の合計が、要除却認定マンションの住宅用途以外の用途に供する部分の床面積の合計より増加しないこと。ただし、住宅の用途に供する部分の床面積の合計が増加する場合はこの限りでない。
イ 住宅用途以外の用途に供する部分の床面積の合計が、基準容積率の算定の基礎となる延べ面積を超えないこと。